2011年04月30日の旅(急行飯田線秘境駅号)

秘境駅とは?

秘境駅とは、酷く簡単に書けば駅以外に何も無い駅である。実際にどの様な駅が該当するのか等の詳細は、“秘境駅へ行こう!”を御覧頂きたい。ここでは簡単な説明を書いておく。

通常、鉄道は鉄道会社の利益の為に引かれている物であり、決して一部の人々の道楽の為に運行されている訳ではない。鉄道が利益を生むためには人が乗車しなければならず、人が乗降する場所は駅である。また、鉄道に乗る人は大抵の場合、車に乗れない若しくはあまり乗らない為に鉄道に乗るのであり、駅までに数時間もかかるような場所に駅を設置しても、誰も乗車しないので、結局利益を産まず、維持費が嵩むばかりである。以上の理由から、鉄道路線は市街部または都市間に敷設され、駅は人口が多い地域、若しくは観光地等に設置されることが常である。しかし、世の中には、様々な理由から上記の条件を満たさないような場所に駅が設置されているものがある。理由としては、例えば鉄道敷設時の地形上の問題であったり、地図が変わるほどの工事の影響であったり、世の中の変化であったりである。そのような駅を一部の人々(所謂、“鉄道ファン”)が秘境駅と呼ぶようになったのである。

さて、“急行飯田線秘境駅号”とはJR東海が運行する臨時列車であり、その名の通り、飯田線内に存在する秘境駅を重点的に回るために運行される列車である。元々は飯田線秘境の旅(正確な名前は調べてない)というツアーの為に運行されていた団体列車を、急行とした物である。今、そのツアーは、“「飯田線 秘境駅号」で行く 秘境6駅探訪の旅”という名前で、ジェイアール東海ツアーズによって企画されている。今回の旅は、そのツアーに参加したものである。

急行列車自体は、窓口に頼めば指定席を取ることが可能である。また、JR東海自身が“急行飯田線秘境駅号”という名前で運行していることを考えると、JR東海がそれらの駅は秘境駅だと認めており、観光資源として活用しようと考えているという事なので、それらの駅はまだまだ安泰だなと思う。また、中央新幹線の途中駅が飯田駅になると考えられているので、飯田線自体も安泰だなと思う。

出発

今回のこの旅行はツアー旅行であり、細かいところの融通が利かないので、名古屋出発としてツアーを頼むと、名古屋からから新幹線こだま号で豊橋まで行くことになる。自分が名古屋から新幹線に乗るときはほぼ確実に東京まで乗る関係上、のぞみ号ばかり乗っているので、こだま号に乗車することはとても新鮮である。存在価値が全く分からない三河安城駅に一旦停車し、一本の電車に抜かれた後に出発し、名古屋から30分程で豊橋駅に到着した。名古屋、豊橋間が、新快速で50分程度、名鉄特急で53分程度、ひかり号で19分程度であることを考えると、料金の割にはあまり早く無い感じが残念である。

豊橋駅

新幹線のホームから在来線側のホームを見ると、既に目的列車は到着していた。新幹線の乗り換え口付近には、ツアーのスタッフが居り、何度も出発時間を告げていた。また、乗り換え口の有人改札にはこのツアーに参加する人が乗り換えるために列が出来ていた。

列に並び駅員に切符を見せ、改札を通った後、直ぐに出発ホームに向かい適当に写真を撮影した。自分の他にもかなりの人がカメラを用いて電車の撮影を行っていた。そのホームでもスタッフが、発車時刻を忙しなく告げていた。自分はそれらを聞きつつ、撮影が済み次第乗車し、出発時間を待った。

旅の始まり

急行列車は定刻通り豊橋駅を出発した。次の停車駅は新城駅である。列車が動き出してからホームを見てみると、幾らかの人がホームに残っており、カメラをこちらに向けていた。所謂、“撮り鉄”の方なのだろう。

この付近の区間、特に豊橋、豊川間は人の流動がそれなりにあるので、区間列車が設定されておりその他の区間に比べて列車本数が多い。とは言え、今回の旅は秘境駅が目的であり、人が多いところなど関係ない。故に豊川駅等も通過する。通常、特急が停まる駅までも通過するというのがこの列車の面白いところである。

また、新城駅に到着する間にも、多くの人がこちらにカメラを向けていた。中には女性の方も居らっしゃった。

新城駅

出発して暫くすると新城駅に到着した。新城駅は秘境駅ではないが、地域の観光を振興するために停車するものと思われる。自分はお金を殆ど持っていなかったので、駅舎の写真や、ゆるキャラ“のんすけ”を撮影して時間を潰した。色々と撮影している間に出発の時間が来てしまったので、すぐさま電車に乗り込んだ。

次の停車駅は、東栄駅である。

東栄駅

東栄駅は駅舎が非常に特徴的な駅である。ホーム側からみると鬼の形をしている。どうしてこんな田舎の駅に、無駄に豪華な駅舎があるのだろうか、と思ってしまうが、こういう所にしかお金をかけるところが無いのかも知れないなと思った。ここでも物産展が開かれていたが、自分は写真を撮影しているうちに、発車時間が来てしまったので何も買わずじまいだった。そもそも買う気が無いのかも知れないが。

次の停車駅は、大嵐駅である。

大嵐駅

大嵐駅は“おおぞれえき”と読む。ここも駅舎が特徴的な駅であり、東京駅のような駅舎だそうだ。“だそうだ”というのも、自分にはそのように見えなかったのである。

この駅は秘境駅ではない。今見なおしてみるまで秘境駅だと思っていたが、近くに旧富山村の集落が存在しており、それなりの利用者が居るそうだ。

吊り橋を渡ったり、写真を撮影しているうちに出発時間が来てしまったので、乗車した。

次の停車駅は、小和田駅である。

小和田駅

小和田駅は、正真正銘秘境駅である。色々なウェブサイトで語りつくされているが、本当に周りに殆ど何も無い。あるのは愛と書かれた恥ずかしいベンチと、廃墟だけである。この駅が存続している理由はWikipediaに書かれているのでそちらに譲るとする。本当に興味深い駅である。ただし、この日は沢山の人が居るので廃墟感は半減である。一人で来たら、嘸かし怖いことだろう。

次の停車駅は、中井侍駅である。

中井侍駅

中井侍駅は、一応秘境駅である。ただ、近くに民家もあるので、そうではないと唱える人が居るようだ。何れにせよ、自分には滅多に訪れることがないのでそんな些細な違いには興味がない。その場に駅が存在しているかいないか、それが問題だ。

近くには雄大な自然が広がっており、雰囲気は最高である。是非ともハイキングに来たい場所であるが、歩いている内に何処に到着するのか分からないのでは非常に怖いものである。本当に行うならば入念に下調べが必要であろう。

次の停車駅は、平岡駅である。

平岡駅

平岡駅では、休憩を取った。外を適当に歩いていたが、非常に急な坂が坂が多かった。本当に30度以上の坂なのではないかと思ってしまう。ただ、山奥だから仕方ないのかも知れない。雨が降り始めたときに屋根のあるところまで一気に坂を登ったが、非常に疲れた。流石に運動不足なのだろうか。自分でもこうであるのに、年寄りには更にキツイと思うのだが、毎日歩いている地元住民には普通の運動なのかも知れない。しかしそんな坂があっても、山の奥の自然の中というのは良いものだ。

次の停車駅は、為栗駅である。

為栗駅

為栗駅は、“してぐりえき”と読む。

ここもまた、吊り橋が近くにあるだけの秘境駅である。この吊り橋、大嵐駅にある吊り橋とは異なり、自動車は通行禁止である。人間が歩くだけで良く揺れる吊り橋である。ただ、それなりに強固に作られている様子なので怖さは無かった。この他に特に物が存在しているわけではない。

次の停車駅は、田本駅である。

田本駅

田本駅は、正真正銘の秘境駅である。片面が断崖絶壁になっている。ただそれだけの駅だ。一体こんな駅から下車して何処へ行こうと言うのか。Wikipediaには15分程登れば集落へへ出れると書かれているが、あんな道15分も進みたくないというのが正直なところだ。

次の停車駅は、金野駅である。

金野駅

金野駅は、これまた正真正銘の秘境駅である。何も無い。それが秘境駅たる理由であり、何かあってはいけないのである。いや、何も無いというのは嘘である。自転車置き場は存在していた。ただ、使われていそうな自転車は一台も無い様であり、三台ほどの自転車が捨てられていた。

次の停車駅は、千代駅である。

千代駅

千代駅は、一応秘境駅である。ただ、近くには民家もあり、それ程秘境感漂っているわけではない。ここも自転車置き場があるが、ここも一台も止まっていなかった。

次の停車駅は、天竜峡駅 終点である。

天竜峡駅

天竜峡駅天竜峡で飯田線秘境駅号の片道はお終いである。ツアーでここまで来た方はこれから、十勝巡りに行く。川を下りつつその雄大な景色を眺めるのである。

その始めに写真を撮られたのだが、その写真が一枚1500円だそうである。実に高い。正直こういう所で儲けなければならないことは分かるが、余りにも高すぎて誰一人として買っていないようだった。少し可哀想だが、商売が下手だという事で、仕方が無いのだろう。売れなくても人を乗せている時点で十分黒字だろうから問題ないとは思うが。

十勝巡りが終わった後は、適当に天竜峡駅周辺を歩いていた。しかし、特に見る物も無いので、さっさと改札を通って写真を撮影した。

すると何時の間にやら、上りの出発の時間が来てしまったので乗車した。

天竜峡から豊橋へ

次の停車駅は、唐草駅である。とは言え、唐草駅では見学の時間が無い。恐らく個人の利用者で、天竜峡からここまで川を下ってきた人のために停車するものと思われる。ツアー客以外の事も考えられているようである。

次の停車駅は、伊那小沢駅である。

伊那小沢駅

伊那小沢駅は極々一般的な駅である。しかし、やはり周りには何も無い。自然だけがある。鶯の声が非常に良く聞こえた。

次の停車駅は、豊橋駅である。

急行列車

下りの列車は、多くの駅へ長時間停車してきて、豊橋、天竜峡間の所要時間は普通列車よりも長かったが、上りの列車はそんな事はない。伊那小沢駅から、豊橋までダイヤ上は一度も停車しないのである。しかし、当然の事ながら飯田線は単線なので対向列車の待ち合わせがある。更には、普通列車の待ち合わせすらある。急行列車が普通列車の待ち合わせをするなど正直言えば意味が分からないが、ダイヤを変えないため方法なのだろう。そういう訳で、途中、特急列車と、普通列車の待ち合わせのためにそれなりに長時間停車しながら電車は走行して行った。

帰宅

豊橋に到着したら、駅自体には用は無く、新幹線の時間は決まっているので、直ぐに乗り換え口に向かい、そのまま乗車し帰路についた。

補遺

幾らか文章中に挿し込むことが出来なかったので、ここに書く。自分のメモがわりである。

先ず、この文章が非常に短いのは、実際、何も無いからである。何かあったら、そこは秘境駅ではない。何も無いからこそ秘境駅なのである。そして同時に、何も無いからこそ書くことがないのである。もう少し時間があれば何かを発見し書くことが出来るかも知れないが、ほんの15分程度ではただ上っ面をなぞるだけになってしまう。とは言え、時間があっても何かを発見できる可能性は非常に低いので、この時間は適切だと思う。少し忙しない方が充実した感じが生まれる。

今回、車窓を眺めていて特に行きたいかなと思ったところは、浦川駅周辺である。駅名だけ携帯でメモってあるだけなので、どの様な点に引かれたのかは不明であるが、何かを良いと思ったのだろう。適当な機会があれば、是非とも降りて歩きたい。


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